

「旨醇(うまじゅん)」はその名のとおり、辛さと旨さの両立を狙った日常使いの純米酒だ。看板の山廃純米大吟醸が「ハレの山廃」なら、こちらは毎晩の食卓に置ける「ケの天狗舞」。精米歩合60%・五百万石中心という構成は定番の山廃純米酒と同じだが、仕込みは山廃ではなく速醸系で、より気軽に飲める辛口に振ってある。
日本酒度+5、酸度1.7。この数値が示すとおり、天狗舞のラインの中ではかなり辛口寄りで、キレが立つ。山廃純米のねっとりした酸とは違い、旨醇の酸はもう少し軽快で、料理の脂をすっと洗い流してくれる。香りはあえて控えめに作られていて、香り評価が低いのは欠点ではなく食中酒としての設計思想だ。
私がこのSKUを面白いと感じるのは、同じ蔵・同じ価格帯で「山廃純米酒」と並ぶ位置にいながら、性格を真逆に振っている点だ。山廃が濃醇旨口なら、旨醇は端正な辛口。蔵の二枚看板として飲み比べると、車多酒造の幅の広さがよくわかる。
温度の自由度が高いのも魅力で、冷やしても良いがぬる燗にすると旨みがふくらみ、+5の辛口が穏やかになる。寒い時期の燗酒として、コストを気にせず日々開けられる一本だ。
ペアリングは豚の生姜焼き、ぶりの照り焼き、鯖の味噌煮といった味の濃い家庭料理。四合瓶で1,300〜1,700円前後と財布に優しく、「とりあえずの一本」を天狗舞で固めたい人に薦めたい。