

栃木県宇都宮市本町、天明8年(1788年)に近江商人として創業した虎屋本店が醸す「七水(しちすい)」の純米吟醸55雄町を、編集部で開けてみた。城下町・宇都宮の中心部に蔵を構える老舗で、近年は若い造り手が立ち上げた「七水」が、雄町を軸にした端正な造りで評価を高めている。グラスに注ぐと、ほぼ無色透明に近い澄んだ液体で、雄町の濃醇なイメージとは裏腹に、まず透明感と清潔感が目に映る。
香りは、洋梨や青リンゴを思わせる穏やかな吟醸香に、雄町由来のふくらみが奥から添う。派手に主張する立ち香ではなく、料理を邪魔しないバランスに整えられた上品な香り立ちだ。岡山系の酒造好適米「雄町」を55%まで磨いて使い、米の旨みを引き出しつつも全体を端正にまとめている。この純米吟醸55雄町(火入)は、IWC2025の純米吟醸酒部門でゴールドを受賞している(主催発表・販売店表記による)。
口に含むと、雄町らしい旨みがやわらかく広がり、続いて酸とキレがすっと後口を整える。日本酒度+1.5前後・酸度1.6・アルコール度数16.7度という数値どおり、甘辛はほぼ中庸からわずかに辛口寄りで、旨みの厚みと切れ味が両立している。雄町を使いながら重たくならず、最後はきれいに引いていくので、食中酒としての使い勝手がいい。生酛仕込みのバージョンも展開されているが、この火入の純米吟醸はより端正で輪郭のはっきりした味わいだ。
温度帯は、冷酒(8〜12℃)で香りと酸の輪郭が際立ち、雄町の旨みがすっきりまとまる。常温に近づけると旨みのふくらみが増し、味の重心が下がって落ち着いた表情になる。冷やしてシャープに飲むのも、温度を上げて旨みを膨らませるのも、どちらも様になる懐の深さがある。
ペアリングは、白身魚の刺身や鶏の塩焼き、天ぷら、出汁巻き卵といった、繊細な旨みと塩味を生かした和食がよく似合う。雄町の旨みが料理の出汁感を受け止め、酸がきれいに口中をリセットしてくれる。価格は四合瓶でおおむね1,700〜2,000円(720ml実勢)。城下町の老舗が雄町で磨いた、受賞歴に裏打ちされた一本として安心して勧められる。