

那須烏山市で嘉永2年(1849年)に創業した島崎酒造の代表銘柄が「東力士」。蔵を構えた二代目が大の相撲好きだったことに由来する名で、戦時中の地下倉庫を転用した「どうくつ酒蔵」での長期熟成酒の取り組みでも知られる蔵だ。今回はその定番ラインの純米吟醸を取り上げる。
東力士という銘柄全体に共通するのは、米の旨みと甘みを前に出した甘口・旨口の味わい。この純米吟醸も例外ではなく、五百万石を55%まで磨きながらも、磨きの軽さを感じさせない厚みのある甘旨味が中心に据えられている。香りは穏やかな果実香で、ふっくらとした含み香が続く。
口当たりはまろやかで、日本酒度はやや甘め寄り、酸度1.4前後と穏やか。キレを売りにするタイプではなく、甘みと旨みが余韻まで長く残る設計だ。冷やすと甘さが締まって飲みやすく、常温に置くと旨みの幅が広がる。辛口を好む人にはやや甘く感じるかもしれないが、米の旨さを素直に味わいたい向きには嬉しい一本。
ペアリングは、甘辛い味付けの肉料理と好相性。すき焼き、鶏の照り焼き、肉豆腐など、砂糖と醤油を使う家庭料理に合わせると、酒の甘旨味が料理の甘辛さと呼応する。
四合瓶で1,500円前後。甘旨口の純米吟醸を探している人や、熟成酒で名高い蔵の定番がどんな味かを知りたい人に向く、栃木らしい一本。