
大阪府交野市、生駒山系の麓で1826年(文政九年)に創業した大門酒造の「利休梅(りきゅうばい)」は、河内・交野の地酒として知られる。蔵の看板は山田錦を55%まで磨いた純米吟醸「静香(しずか)」だが、その下に位置する純米酒も、交野の伏流水でていねいに醸された食中向けの一本だ。グラスに注ぐと淡くおだやかな色合いで、香りで主張するより食卓に寄り添う構えをしている。
香りは控えめで、炊いた米やうっすらとした穀物香が中心。純米吟醸「静香」が柔らかな吟醸香を持つのに対し、こちらの純米はより素朴で、嗅いだ瞬間に料理を呼ぶタイプ。生駒山系の軟水由来とみられる、角の取れたやわらかな入り口が持ち味だ。
味わいは、利休梅の純米吟醸「静香」が日本酒度+3・酸度1.7という辛口寄りの設計であることを踏まえると、同じ蔵の純米もおおむね日本酒度+3前後・酸度1.5〜1.7前後の辛口に整えていると編集部はみている(蔵が純米単体の数値を細かく公表していないため推定)。含むと米の旨みが穏やかに広がり、後半は中庸の酸ですっと切れる。甘さに頼らず、和食の食中酒として邪魔をしない方向にまとめた、いわゆる「飲み飽きしない」純米だ。冷や(12〜15℃)では辛口のキレが立ち、ぬる燗に振ると旨みがふくらんで丸くなる。
ペアリングは交野・河内の家庭料理を思わせる和食が合わせやすい。焼き魚、白身魚の刺身、煮物、おでんといった出汁と醤油の効いた料理に、辛口のキレと中庸の酸がそっと寄り添う。香りの強い料理より、素材を生かした薄味〜中濃の和食で本領を発揮するタイプだと感じた。
価格は四合瓶でおおむね1,300〜1,700円(実勢)。純米吟醸「静香」が720mlで2,000円前後であることを基準にすると、純米はそれより手の届きやすい価格帯に収まる。大阪・交野の老舗が醸す堅実な辛口純米として、日常の食卓に常備したい銘柄だ。