

塩谷町の松井酒造店が醸す「松の寿」。県内でも有数のやわらかさといわれる地元の湧き水を仕込み水に使い、伝統的な手法と丁寧な造りを守る蔵だ。下野杜氏を中心とした栃木の新世代の酒として、雄町をはじめとする酒米の個性をきれいに引き出す造りに定評がある。
この純米吟醸は雄町を55%まで磨いた一本。香りは穏やかで上品、リンゴや洋梨を思わせる果実感の奥に、雄町らしい米の甘い香りがひそむ。軟水仕込みらしく、口当たりは驚くほどなめらかで、刺々しさがまったくない。
味わいは、雄町特有のふくよかな旨みが軸。日本酒度+3・酸度1.6前後と、数値だけ見ると辛口寄りだが、米の甘旨味と酸のバランスが良く、飲み口はやわらかな旨口に感じられる。中盤でふくらんだ味が、後半に向けてすっと収束していく流れが心地よい。アルコール16%とやや高めだが、重さは感じさせない。10〜13℃でその輪郭が最もきれいに出る。
ペアリングは、適度に脂のある肉料理や旨みの強い食材と好相性。鴨ロース、豚しゃぶ、きのこのソテーなど、淡白すぎない皿に合わせると、酒の旨みと料理がきれいに重なる。
四合瓶で1,900円前後。軟水仕込みのなめらかさと雄町の旨みを両立させた完成度の高い一本で、栃木の中堅蔵のなかでも安定して薦められる。雄町好きなら一度押さえておきたい。