

大阪府高槻市、摂津富田の壽酒造(寿酒造)が醸す「國乃長(くにのちょう)」の純米酒は、1822年創業の蔵が手がける食中向けの定番だ。近年はクラフトビールやタップルームでも名を知られる蔵だが、本業の清酒は摂津富田の地で堅実に醸され続けている。グラスに注ぐとわずかに色づいた落ち着いた色調で、香りで売る吟醸系ではなく、毎日の晩酌を支える「飲ませる純米」という佇まいをしている。
香りは控えめで、蒸し米や穀物を思わせる素朴な含み香が中心。上立ち香は最初から狙っておらず、嗅いだ瞬間に料理を呼ぶタイプだ。精米歩合70%という磨きの構成も、香りより米の旨みを残す方向にきちんと振られている。
味わいは、蔵が掲げる日本酒度+3前後のとおり、甘さに寄りかからない辛口の純米。含むと米の旨みが穏やかに広がり、後半は中庸の酸ですっと切れる。酸度は蔵が定番品で明示していないため、編集部としては味わいから1.5〜1.7前後とみている(推定)。派手さはないが破綻もない、いわゆる「飲み飽きしない」設計だ。冷や(12〜15℃)では辛口のキレが際立ち、ぬる燗(40〜45℃)に振ると米の旨みがふくらんで丸くなる。蔵自身も冷やと燗の両方を勧めており、温度で表情が変わる食中酒として扱いやすい。
ペアリングは味のしっかりした和食が合う。焼き魚、煮物、おでん、豚の角煮といった出汁と醤油の効いた料理に、辛口のキレが脂と塩気を流してくれる。繊細な前菜よりも、家庭の温かいおかずと合わせるのが國乃長らしい使い方だと感じた。
価格は四合瓶でおおむね1,200〜1,600円(実勢)。純米としては手の届きやすい価格帯で、常備して毎晩温めるにはちょうどいい。華やかさで選ぶ一本ではないが、大阪・摂津の歴史ある蔵が醸す堅実な辛口純米として、日常の食卓に置きたい銘柄だ。