

名古屋市北区で百有余年にわたり酒を醸す金虎酒造。「歴史と風土と人の縁、名古屋を醸す」を掲げるこの蔵の定番「純米酒」を、編集部として腰を据えて向き合った。精米歩合70%、アルコール18%という数値がまず目を引く。近年の純米酒は15〜16%が主流のなか、18%は明らかに腰の据わった高アルコール設計で、注いだ瞬間から「これは食事と並べて飲み込んでいく酒だ」という佇まいが伝わってくる。色合いはやや黄味を帯び、華やかさで売る吟醸とは出発点からして違う、骨太な一本である。
香りは穏やかで控えめ。グラスに鼻を近づけると、炊いた米や栗を思わせる穀物様のニュアンスがほのかに立つ程度で、吟醸香のような派手さはない。アルコール18%ぶんのボリュームが鼻先にほんのり感じられ、含み香にも厚みがある。香りを楽しむ酒ではなく、口に含んでからが本番だと最初の一嗅ぎで察しがつく。名古屋という濃い味文化を背負った、実直な香り立ちだ。
一口含むと、米の旨みが舌の中央にどっしりと広がる。精米歩合70%、アルコール18%という数値どおり、輪郭のはっきりした濃醇な味筋で、飲みごたえは数字以上にある。日本酒度・酸度は蔵の定番純米の公開値が確認できなかったため編集部の推定だが、体感としてはやや辛口寄りで、甘ったるさはなく旨みの後にキレが追いかけてくる。高アルコールゆえに冷酒(10〜13℃)ではやや力強さが前に出るので、ぬる燗(45〜50℃)に振ると旨みが一気にふくらんでまとまりが良くなる。燗で本領を発揮するタイプで、温めることで18%のボリュームが角の取れたコクへ変わる。
ペアリングは、しっかり味付けした和の総菜と相性が良い。もつ煮、肉じゃがやぶり大根といった煮物、焼き魚、おでん。出汁と醤油のコクに旨みが共鳴し、料理の脂を旨みとキレが受け止めてくれる。名古屋めしのような濃い味の一皿に寄せたほうが、この酒の硬派な持ち味が活きる。淡い前菜より、味の濃い卓で使いたい。
価格は720mlでおおむね1,100〜1,400円前後の実勢。高アルコールで飲みごたえがあるぶん、一本での満足度が高くコストパフォーマンスに優れる。なお本品は蔵の定番「純米酒」を基準にレビューしており、日本酒度・酸度は公開値が確認できなかったため、精米歩合・アルコール度数と濃醇な味わいから編集部が推定した数値である点を補足しておく。香りで選ぶ人より、米の味と燗酒を軸に日本酒を飲む人にこそ勧めたい、名古屋の実直な高アルコール純米だ。