
愛知県安城市の神杉酒造は1805年(文化2年)創業の老舗蔵。豊かな田園が広がる西三河の地で、地元産の酒米にこだわった酒造りを続けている。なかでも精米が難しいとされる愛知県産の酒造好適米「若水(わかみず)」を自家精米で扱い、磨き上げる技術に定評がある。
この「神杉 純米」は、その若水を主軸に据えた食中酒タイプの純米酒。香りは穏やかで、含み香に炊いた米を思わせる柔らかな印象が立つ。一口含むと、若水らしい厚みのある旨みが舌の上にじんわり広がり、それを支える程よい酸が全体を引き締める。派手な吟醸香で押すタイプではなく、料理と並んでこそ生きる骨格の太さがある。
温度帯の幅が広いのも持ち味。冷酒(10〜13℃)では旨みの輪郭がきりっとして、ぬる燗(40〜45℃)に振ると米の甘旨が膨らみ、後口の辛みがいっそう心地良くなる。燗冷ましでも崩れず、晩酌のペースに寄り添ってくれる。
ペアリングは、家庭の和食全般と素直に合う。焼き魚、肌寒い季節のおでん、鶏の塩焼き、根菜の煮物。味のしっかりした惣菜を受け止める懐の深さがある。
四合瓶でおおむね1,400〜1,800円。手に取りやすい価格帯ながら、愛知の地米の個性をきちんと味わえる一本。神杉のラインアップは商品ごとに精米歩合や仕込みの幅があるため、本記事のスペックは若水を用いた純米酒の代表的な数値を参考値として記載している。購入時はラベル表記で確認したい。