

「鳳凰美田 髭判」は、小林酒造が珍しい酒米・亀粋(きすい)で醸す純米大吟醸。亀粋は、伝説的酒米「亀の尾」の突然変異種で、籾に髭のような長い野毛(のげ)が生えることからこの名がつき、ラベルの「髭判」もそこに由来する。山田錦や五百万石が並ぶ鳳凰美田のラインナップの中で、米の素性そのものがユニークな一本。
精米歩合は50%。山形県高畠産の亀粋を100%使う。亀の尾の血を引く米らしく、ガツンとした甘さではなく、輪郭のはっきりした旨みと、すっと抜ける軽快さが同居する。日本酒度±0、酸度1.6。同じ無濾過本生でも、愛山のBlack Phoenixが「濃さ」で攻めるのに対し、髭判は「キレと透明感」で食事に寄り添うタイプといえる。
香りはメロンや白い花を思わせる吟醸香だが、押しつけがましくない。冷酒で立ち上がる香りを楽しんだあと、口の中では旨みが横に広がり、後味は意外なほどドライにまとまる。食中にグラスが進む設計で、香り偏重の華やか系が苦手な人にこそ刺さる。
ペアリングは天ぷらや唐揚げといった揚げ物。亀粋由来のキレが油を流し、出汁巻き卵や白身魚の昆布締めのような淡い旨みにも自然に重なる。香りが穏やかな分、料理の幅は黒判やBlack Phoenixより広い。
価格は720mlで2,200〜3,000円ほど。純米大吟醸でこの価格は十分に手が届く範囲で、希少米の亀粋を試せると考えれば割安感もある。流通は特約店中心で数量も多くないため、見かけたら確保しておきたい一本。