

義侠の「侶(ともがら)」は、濃醇旨口で鳴らすこの蔵にあって、めずらしく軽やかな顔を見せる純米吟醸。アルコール度数は13〜14度に抑えられ、原酒でありながら水のように体に入ってくる。義侠=重いという先入観を、いい意味で裏切ってくる一本だ。
使う米はやはり兵庫県東条特A地区の山田錦、精米歩合は60%。同じ磨きの純米吟醸 山田錦60が辛口でガッシリしているのに対し、こちらは日本酒度マイナス1の領域に置き、ほのかな甘みと穏やかな香りで「軽快さ」を狙っている。同じ蔵・同じ米・同じ精米でも、設計次第でここまで表情が変わる好例だ。
味わいは、淡い甘みがすっと立ち上がり、低アルコールゆえに余韻は重くならず引いていく。香りは華美に走らず、含むと米のやさしいニュアンスが鼻に抜ける。冷酒(10〜13℃)が基本だが、15℃前後の冷やしすぎない温度でも、また50℃近くまで上げてもバランスを崩さない懐の広さがある。
ペアリングは、繊細で出汁の効いた料理。湯豆腐、白身魚の刺身、だし巻き卵、若鶏の塩焼き。素材の味を消さず、食中酒として静かに支える。一杯目から最後まで飽きずに付き合える、文字どおり「侶(とも)」のような酒だ。
四合瓶で3,000円前後。義侠の硬派なイメージしか知らない人にこそ試してほしい、軽さの中に蔵の技が透けて見える純米吟醸である。