

義侠 純米原酒 60%は、この蔵の「濃醇旨口」という看板をもっとも素直に体現する定番。兵庫県東条特A地区の山田錦を60%精米で純米に仕込み、加水せず原酒のまま瓶詰めする。吟醸香で着飾ることのない、山田錦の旨みと力をそのままぶつけてくる、義侠の真骨頂といえる一本だ。
同じ60%精米でも、純米吟醸 山田錦60が吟醸の枠で整えてあるのに対し、こちらは「純米原酒」として米の密度を最優先する。色は淡い黄金、香りは穏やか。口に含むと米の旨みが塊で押し寄せ、原酒らしいボリュームが舌を満たす。低アルの「侶」とは対極の、ずっしりした飲みごたえだ。
日本酒度+2.5前後、酸度1.6、アルコール16〜17度。高めの酸が濃い旨みを引き締め、辛口のキレへとつないでいく。冷酒でも飲めるが、この酒の本領はやはり燗。45〜50℃のぬる燗〜上燗にすると、米の旨みが大きくふくらみ、義侠が「燗の蔵」と呼ばれる理由がよくわかる。
ペアリングは、味の濃い煮込み料理が王道。もつ煮込み、ぶり大根、牛すじ、ジビエ。脂やコクの強い肴ほど、原酒の濃さと酸のキレが冴える。冬場、熱燗にして濃い肴と合わせれば、これ一本で長く過ごせる。
四合瓶で2,400〜2,900円。義侠の世界観を価格を抑えて知るなら、まずこの純米原酒60%から。磨きや熟成で変化をつけた上位銘柄と飲み比べれば、この蔵が「山田錦の旨み」をどこまで多彩に描き分けているかが見えてくる。