豊の秋 純米吟醸
島根県

豊の秋 純米吟醸

蔵元: 米田酒造
純米吟醸 原料米: 五百万石 精米歩合 55%
★ 4.2
★★★★・
編集長 丸山評価

スペック

日本酒度
+2
酸度
1.4
アルコール度数
15%
価格目安
1,500〜1,900円
味わいレーダーチャート
香り甘みキレ余韻個性
4象限ポジション
辛口甘口淡麗濃醇 爽快・キレ系穏やか・優しい系どっしり辛口芳醇・甘口

料理ペアリング

白身魚の刺身 天ぷら 焼き魚 出汁の効いた煮物

この銘柄のタグ

編集長レビュー

編集長 丸山
日本酒愛好家・延べ1000銘柄を試飲

松江の米田酒造は、1896年(明治29年)に城下町で創業した蔵だ。代表銘柄「豊の秋」は、豊かな実りの秋を願って名づけられたもので、松江という土地の食文化に根ざした食中酒として長く親しまれてきた。この純米吟醸は、地元の祭り囃子から名を取った上位の「鼕々(とうとう)」などとは別の、蔵の純米吟醸の基準を示す一本。五百万石を55%まで磨き、低温でじっくり仕上げた、肩肘張らない日常の吟醸酒だ。

グラスに注ぐと、香りは派手な吟醸香というより、りんごや洋梨をほのかに思わせる穏やかな含み香。前に出すぎず、最初の一口を含んでから味わいの輪郭が見えてくるタイプだ。色はごく淡く、見た目も端正そのもの。香りで圧倒する現代香系とは方向性が異なり、あくまで食卓に寄り添う設計だと分かる。

口に含むと、五百万石らしい軽快な旨みがすっと広がり、そこから穏やかなキレが追いかけてくる。日本酒度はおおよそ+2前後、酸度1.4ほどと見たが(※公開情報をもとにした推定で、SKUにより変動する)、数字どおり中庸からやや辛口寄りの着地で、甘さに寄りかからない。膨らみとキレのバランスがよく、飲み疲れしない。冷酒(10〜12℃)で輪郭が締まり、常温に近づけると米の旨みがやや前に出る。ぬる燗でも崩れず、温度の幅で表情を変えられる懐の深さがある。

合わせたい料理は、淡麗な和食を中心に幅広い。白身魚の刺身、塩で食べる天ぷら、焼き魚、出汁の効いた煮物。松江は宍道湖の魚介や出雲そばに代表される、繊細な味付けの食文化を持つ土地で、この酒もそうした料理を引き立てる方向に振られている。香りで押さない分、料理の邪魔をせず、一日の食卓に長く付き合える。

価格は720mlで実勢1,500〜1,900円ほど(※流通により変動)。純米吟醸としては手に取りやすく、五百万石の純米吟醸がどういうものかを知る基準として勧めやすい。突出した個性で驚かせる酒ではないが、香り・旨み・キレのバランスが整った、松江の食中酒として一本持っておいて損のない純米吟醸だ。