

玉櫻酒造は島根の山あい、邑南町にある小さな蔵で、地元産の契約栽培米を100%使い、単一品種・無濾過・ブレンドなしという頑固な造りを貫いている。この生酛純米は、そんな蔵の考え方がそのまま液体になったような一本だ。原料は地元の玉栄を70%精米、酒母は手間のかかる生酛仕込み。
冷やで飲むと、生酛らしい乳酸由来の厚みと、日本酒度+8・酸度1.9が効いた骨太の酸が立ち上がる。香りは控えめで、米と発酵そのものの匂いが中心。この時点でも旨みはしっかりあるが、やや硬く感じる人もいるかもしれない。
真価が出るのは燗だ。45〜50℃まで温めると、硬さがほどけて旨みと酸が一体になり、味の奥行きがぐっと広がる。いわゆる「燗上がり」を分かりやすく体験できる酒で、ぶり大根やおでん、タレの焼き鳥といった出汁と醤油の効いた料理を片っ端から受け止めてくれる。
frontmatterの数値は蔵・販売元が公表している玉栄100%・精米歩合70%・日本酒度+8.0・酸度1.9をそのまま採用しており、ここは推定ではなく確定値だ。年度(BY)によって微差は出るが、骨格は変わらない。
四合瓶で2,000〜2,400円。香りで売る今どきの酒とは対極にあるが、燗で米の旨みを引き出す飲み方が好きな人にとっては、価格以上に通える一本になる。冬場に常温保存で一升瓶を抱えておきたくなるタイプだ。