

玉乃光と聞いて派手な吟醸香を期待すると、最初の一杯で良い意味の肩透かしを食らう。グラスを傾けると淡い山吹がかった色合い、香りは控えめで、立ち上がるよりも口に含んで初めて素性が分かるタイプ。1964年に純米酒復興へ早くから舵を切った蔵らしく、香りで押すのではなく米の旨みで勝負する設計だと、注いだ時点で伝わってくる。
香りは穀物系の落ち着いた含み香で、わずかに栗や蒸し米を思わせるニュアンス。雄町100%という素性を考えると派手さは抑えめだが、その分くどさがない。鼻を近づけて探りにいく香りで、料理の前後で印象が変わらず邪魔をしないのが、この一本のキャラクターだと感じた。
味わいの中心はやはり雄町由来のふくよかな旨み。一口含むと舌の中盤でふっくらと米の甘旨が膨らみ、酸度1.5の張りがそれを引き締めて重たく流れ込ませない。日本酒度+3とはいえ淡麗辛口ではなく、旨みと酸が拮抗する中庸の味筋。温度帯では花冷え(10℃前後)で輪郭が締まり、常温〜ぬる燗に寄せると旨みが一段ふくらむ。冷やしすぎより、少し温度を上げた方が雄町の良さが出る印象だった。
ペアリングは食中酒として幅が広い。焼き魚や出汁巻き卵といった和の定番はもちろん、豚の角煮やきのこの炊き込みご飯のような旨みと甘辛さのある料理にもよく寄り添う。酸がある分、脂のある料理を受け止めて口中をリセットしてくれるので、献立を選ばず一献目から最後まで通せる懐の深さがある。
720ml実勢で2,500円前後。純米吟醸でこの価格帯なら、晩酌のレギュラーに据えられる現実的な一本だ。派手さで記憶に残る酒ではないが、料理と合わせて飲み進めるほど印象が上がっていく。香りで選ぶ人より「飯と一緒にだらだら飲みたい」人に勧めたい、京都・玉乃光らしい食中酒の好例として編集部は評価する。