

倉敷市児島の三冠酒造が掲げるのは「名脇役に徹し、食事を主役にする酒」。その方針を、岡山特産の雄町を55%まで磨いた純米吟醸の無濾過生原酒で確かめてみた。料理を引き立てる前提で設計された酒が、単体でどこまで成立するのかが見どころだ。
注ぐと、ごくわずかに色を帯びた液から、控えめな吟醸香と生原酒らしい瑞々しさが立ち上がる。一口含むと、雄町の旨みがしっかり乗りながらも、日本酒度+5・酸度1.8が後半をきりりと締める。無濾過生原酒のためアルコール17%の厚みはあるが、甘さに寄りかからない分だけ輪郭が明瞭で、最後はすっと引いていく。余韻に米の旨みが残り、次の一口を呼ぶ。
味の重心は中庸からやや辛口寄り。雄町の濃さと辛口のキレが同居するため、ぐいぐい飲むより、料理と交互に運ぶほうが本領を発揮する。冷酒(10℃前後)で生原酒のフレッシュさを楽しむのが基本で、温度が上がると旨みが前に出て表情が変わる。要冷蔵での管理が前提になる。
ペアリングは、蔵の意図どおり「食事が主役」になる相手が合う。塩で食べる焼き鳥や天ぷら、刺身の盛り合わせなど、素材の味を立てたい皿に寄り添い、酒の酸とキレが脂や生臭みを流す。イカの塩辛のような塩気と旨みの強いつまみとも噛み合う。
四合瓶で2,000円前後。派手な香りで主張する酒ではないが、食卓に置いて毎日付き合いたいタイプを探している人には、長く付き合える実力派だ。