

大嶺酒造は1822年創業ながら一度途絶え、2010年に秋吉台のふもとで復活した蔵だ。3つの米粒を象ったロゴと余白の効いたボトルデザインは日本酒の棚で一際目を引くが、見た目だけの銘柄ではない。仕込み水に弁天の湧水を使い、ミネラル感のある軟水で醸す造りに特徴がある。
「3粒 山田錦」はその看板にあたる一本。栓を開けると控えめな吟醸香の奥に、洋梨や白桃を思わせる果実の気配が漂う。香りで圧倒するのではなく、口に含んでからの甘みで魅せるタイプだ。
アルコール度数を14度に抑えた原酒で、加水していないのに軽やかに飲める。第一印象はマスカルポーネのようなまろやかな甘酸っぱさで、山田錦由来のやさしい旨みがじんわり広がる。日本酒度はマイナス寄りだが、酸がしっかり下支えするので、甘ったるさには傾かない。後半はすっと引いて、次のひと口を誘う。
冷やしてワイングラスで供すると、香りと甘みの立ち上がりが最も美しい。フルーツや生ハム、フレッシュチーズといった、酒のほうから歩み寄れる組み合わせが楽しい。日本酒に慣れていない人に一杯出すなら、まずこれを選びたくなる飲み口だ。
四合瓶で2千円台前半と、純米大吟醸としては良心的な価格。低アルコールで杯が進むぶん、家飲みのローテーションにも組み込みやすい。山口の新興蔵がどんな酒を造るのか知るうえで、起点になる銘柄だ。