

「ALPHA TYPE2 この上なき華」は、風の森のなかでも実験性と格の高さが際立つ一本だ。テーマは「地元米・秋津穂のポテンシャル追求」。同じALPHAでもTYPE1がストレートな高精米路線なら、こちらは奈良に伝わる古典製法・菩提酛(ぼだいもと)を組み合わせ、秋津穂を22%まで磨き上げた純米大吟醸である。化粧箱入りで、贈答や記念日にも耐える装いを持つ準高級ラインだ。
菩提酛は、室町期に奈良で生まれたとされる乳酸発酵を利用した古来の酛立て。これを現代の風の森が再構築することで、ただ華やかなだけではない、奥行きのある酸の輪郭が生まれる。香りは青リンゴやパイナップルを思わせる果実香に、ほのかなサワークリームのニュアンス。口当たりはまずすっきりとした甘味と旨味が立ち上がり、後半はカルピスを思わせる伸びやかな酸が全体を包んでフィニッシュする——磨きの数字だけでは語れない、設計された複雑さがある。
仕込み水は硬度250mg/L超とされる日本有数の超硬水で、ミネラルが発酵を活発にし、この密度と伸びを支えている。日本酒度・酸度は蔵元非公開のため、22%精米・菩提酛の甘酸バランスに整合する代表値として日本酒度-3前後・酸度1.6前後を採った。無濾過無加水生酒ゆえ、冷蔵保管と早めの開栓後消費が前提。冷酒(6〜10℃)で、ワイングラスに注いで香りを開かせたい。
ペアリングは繊細さで合わせる。白身魚の昆布締め、フルーツ、生ハム、フレッシュチーズ。香りと酸の華やかさを邪魔しない、素材の味で勝負する皿が合う。料理を支配するより、グラス単体でも料理の傍らでも完成された存在感を放つタイプだ。
四合瓶で5,000〜5,800円前後。定番の657や807ラインとは価格帯も狙いも一線を画す、風の森の「上位の表現」を知るための一本である。日常の657、米違いの807を経て、最後にこのALPHA TYPE2へ——蔵の世界を一望する到達点として置きたい。