

春鹿の超辛口路線を、生もと仕込みと原酒という二段重ねでさらに先鋭化させたのがこの鬼斬だ。名前のとおり、鬼を斬るような鋭さを狙った一本で、五百万石を精米歩合60%で生もと仕込みし、加水しない原酒のままで瓶詰めしている。日本酒度+12は看板の純米超辛口と同じ数字ながら、アルコール分18度・生もと由来の厚い酸という組み合わせで、飲み口の重量感がまるで違う。
香りは控えめだが、純米超辛口の静けさとはやや異なる。生もと仕込みらしい乳酸系の奥行きと熟れた米のニュアンスが、抑え気味の香りの底に潜んでいる。華やかさで掴む封印酒や白滴とは完全に別系統で、香りの段階から「飲み応えで勝負する酒」だと伝わってくる。
含むと、原酒らしい密度の高い旨みがどっしりと広がり、そこへ日本酒度+12のキレと酸度1.7前後の生もと由来の酸が重なって、力強く喉の奥へ抜けていく。アルコール分18度の存在感がありながら荒さはなく、超辛口でありながら旨みの層が厚い。冷やすとシャープさが際立ち、ロックにすると度数の高さが心地よい清涼感に変わる。常温ではコクが顔を出し、温度帯ごとに別の酒のように表情を変える懐の深さがある。
ペアリングは、軽い和食より味の濃い料理。牛すじの煮込み、燻製、ブルーチーズ、鴨ロースなど、脂やコク、発酵の旨みを持つ皿に対して、鬼斬のキレと酸が拮抗して互いを引き立てる。同じ蔵の白滴が淡い皿に寄り添うタイプなら、こちらは料理と真っ向からぶつかって勝つタイプだ。
価格は四合瓶で1,900〜2,100円前後(実勢)。生もと・原酒・超辛口と要素を盛り込んだ割に手の届く価格で、満足度は高い。看板の純米超辛口の「さらに上の振り切り版」として、編集長としては辛口好きが行き着く先の一本に位置づけたい。