

雪の茅舎の純米大吟醸は、蔵の頂点に近い格を持つ一本だ。兵庫県産山田錦と地元の秋田酒こまちを45%まで磨き上げ、定番純米吟醸の55%、山廃純米の65%よりさらに一段深く米を削っている。磨きが進むほど雑味は消え、香味は澄んでいく。その極まった透明感を桐箱に収めて届ける、ハレの日のための酒である。
香りは華やかで、メロンや白桃を思わせる上品な吟醸香が明確に立つ。日本酒度+0.4・酸度1.4とほぼ中庸の設計で、口当たりは絹のように滑らか。山田錦由来の上品な甘みと旨みが綺麗に伸び、雑味なく消えていく。突出した個性で押すのではなく、完成度の高さで魅せるタイプだ。
同じ蔵の山廃純米や秘伝山廃が「旨みと酸の幅」で勝負するのに対し、この純米大吟醸は「磨きの清らかさ」で勝負する。精米歩合が45→55→65と段階的に違う雪の茅舎の銘柄を飲み比べると、削りの深さがそのまま香味の繊細さに直結するのがよく分かる。その頂点がここだ。
冷酒(8〜12℃)でいただきたい。温度が低いほど香りの輪郭が締まり、繊細な甘みが際立つ。白身魚の刺身、鮨、帆立、薄味の上品な和食に合わせると、料理の繊細さを邪魔せず寄り添う。香りが豊かなぶん、味の濃い料理よりは淡麗な肴が似合う。
720mlの桐箱入で8,000円前後。日常の一本ではなく、贈り物や節目の食卓のための酒だ。雪の茅舎の磨きの哲学が最も美しく結実した、蔵の格を映す純米大吟醸である。