

毎年、花火ラベルで初夏に登場するのが「夏ノ純米」。山形正宗の季節限定の夏酒で、暑い時季にキリッと冷やして飲むことに照準を合わせている。原料米には山形県産の雪めがみを使い、60%精米で仕立てる純米酒だ。熟成で旨みを乗せる秋あがりとは正反対の、若さと清涼感を前面に出したSKUである。
栓を開けると、バナナ系のフレッシュな香りがふわりと立ち、グラスの中にわずかな発泡感が見える。蔵共通の涼しい硬水の骨格に、夏酒らしい瑞々しさが重なって、見た目と香りだけで体感温度が下がるような第一印象がある。定番の純米吟醸が「通年の落ち着き」なら、こちらは「夏の数か月だけの軽やかさ」だ。
口に含むと、控えめで優しい甘みと旨みが乗ったあと、酸度1.7と微発泡のニュアンスが後口を一気に切っていく。日本酒度+1前後で甘辛は中庸寄りだが、酸とガス感のおかげで体感はとても爽快。レーダーで「キレ」を最高評価にしたのはこの抜群の切れ味ゆえだ。飲み方は、しっかり冷やした冷酒(8〜12℃)が断然おすすめ。燗には向かない、夏のためだけの設計になっている。
合わせたいのは、夏の食卓そのもの。枝豆や冷やしトマト、白身魚の昆布締め、冷しゃぶ、塩でいただく天ぷら。軽やかな旨みと鋭いキレが、暑さで重くなりがちな食欲をすっと立て直してくれる。濃厚な料理よりも、塩と素材で食べるさっぱりした皿に寄せるほど、この夏酒の清涼感が生きる。
四合瓶で1,500〜2,000円前後、出回るのは初夏から盛夏までの限定。秋あがりが「熟成」、稲造が「自社米」、酒未来が「華やかさ」を担うのに対し、夏ノ純米は「季節の涼」を受け持つ。一年を通して山形正宗を追うなら、暑い盛りに必ず一本は冷蔵庫に入れておきたい——そう思わせる、夏の定番だ。