
鶴岡の奥羽自慢は1724年創業と伝わる庄内でも指折りの古蔵で、若い造り手が再構築したフラッグシップが「吾有事(わがうじ)」。県産米を50%まで磨いた純米吟醸を、編集部としてはモダン系の旨口という観点で向き合いたい。
注ぐと淡い麦わら色がわずかに差す。香りはメロンや白ぶどうを思わせるみずみずしい果実香が中程度に立ち、香り先行ではなく味と一体で楽しませる組み立て。
口に含むと、入りから旨みと甘みがふくよかに広がる。日本酒度+1・酸度1.5という数値どおり、甘さに寄りつつ酸がしっかり輪郭を引き締めるので、ベタつかずジューシーにまとまる。中盤の旨みのボリュームに対して後半は酸でキレるという、近年の食中酒トレンドを体現した設計。アルコール16度らしい飲みごたえもある。
温度は冷酒(10〜13℃)で果実香と酸のバランスが最も整う。冷やしすぎると旨みが閉じるので、よく冷やすより少し緩めた帯がよい。
ペアリングは豚の角煮や鴨ロース、チーズ、きのこのソテーなど、コクと脂のある料理に合わせると酸が効いて好相性。四合瓶で2千円台半ばと普段酒よりは張るが、旨口モダンの完成度を一本で確かめたいなら推せる。