天領 純米酒
岐阜県

天領 純米酒

蔵元: 天領酒造
純米 原料米: ひだほまれ 精米歩合 65%
★ 4.1
★★★★・
編集長 丸山評価

スペック

日本酒度
+4
酸度
1.5
アルコール度数
15%
価格目安
1,300〜1,600円
味わいレーダーチャート
香り甘みキレ余韻個性
4象限ポジション
辛口甘口淡麗濃醇 爽快・キレ系穏やか・優しい系どっしり辛口芳醇・甘口

料理ペアリング

白身魚の刺身 焼き魚 鶏の塩焼き 野菜の煮物

この銘柄のタグ

編集長レビュー

編集長 丸山
日本酒愛好家・延べ1000銘柄を試飲

天領酒造は1680年創業、岐阜県下呂市萩原町に蔵を構える老舗だ。看板銘柄「天領」の定番にあたるこの純米酒は、地元岐阜が育てた酒米「ひだほまれ」を65%まで磨いて醸した一本で、飛騨の山あいで飲み継がれてきた地酒の素直な性格がよく出ている。グラスに注ぐとごく淡い山吹色。立ち上がるのは華やかな吟醸香ではなく、炊きたての米を思わせる落ち着いた穀物の香りで、最初のひと口から「食卓の隣にいてくれる酒」という佇まいが伝わってきた。

香りは控えめで、ひだほまれ由来の穏やかな米の香りが中心。果実香で前に出るタイプではなく、料理の邪魔をしない節度ある香り立ちが好印象だ。冷やしすぎると香りが閉じてしまうので、冷蔵庫から出して少し置き、13〜15℃あたりで開いてくる甘い穀物香を待ちたい。

味わいは、精米歩合65%の純米らしい素直な旨みがまず舌に乗り、中盤にかけて米のふくらみが静かに広がる。日本酒度+4・酸度1.5前後という数値どおり、後半はやや辛口に締まってすっとキレていく。重さやクセはほとんどなく、淡麗一辺倒でもなければ濃醇に振り切るでもない、中庸からわずかに辛口寄りの食中純米という立ち位置。飛騨の伏流水で仕込まれた水質の柔らかさが、キレ際の角を取ってまとめている。

温度帯の幅が広いのもこの酒の長所だ。冷酒(12〜15℃)では旨みの輪郭が整い、常温では米のふくらみが増す。さらにぬる燗(40〜45℃)にすると旨みと甘みが一段とふくらみ、燗上がりする典型的な食中純米の表情を見せる。一本で冷やから燗まで温度を動かして楽しめるので、季節や料理に合わせた遊びがある。

ペアリングは、白身魚の刺身や焼き魚、鶏の塩焼き、野菜の煮物といった淡い〜中庸の和食に素直に寄り添う。出汁や塩の効いた料理と合わせると、きれいな米の旨みが料理を後ろから支えてくれる。価格は720mlで1,300〜1,600円前後と純米酒として手に取りやすく、岐阜産ひだほまれ100%の地酒をこの実勢で日常使いできるのは魅力だ。派手な個性や希少性で勝負する一本ではないが、米の旨みを素直に味わえる、普段使いの食中酒として常備しておきたい良酒だと感じた。