

広島県神石高原町という標高500メートル超の高原に蔵を構える三輪酒造は、1716年創業の山の酒蔵。寒暖差の大きい気候を生かした「神雷」は、地元の食卓に寄り添う食中酒として根強い支持がある。今回は広島県産八反錦を60%精米した白ラベルの特別純米を開けた。
香りは抑制が効いている。吟醸香で勝負するタイプではなく、米と麹のおだやかな香りが中心。口に含むと、日本酒度+2.5のやや辛口らしい引き締まった入り口から、八反錦由来の旨みがじわりと広がる。酸度1.7がしっかりしているので、味に芯があり、後半はきれいに切れていく。アルコール16度台の飲みごたえもあって、一杯で満足感がある。
この酒も温度で表情が変わる。冷やでは旨みがやや硬く感じるが、常温に戻すと味がほどけ、ぬる燗にすると米の甘みと旨みがふくらんで真価を発揮する。50℃近い熱燗にしても崩れず、むしろキレが際立つ。高原の蔵らしい、燗で映える骨太な酒質だ。
合わせたいのは広島らしく牡蠣。土手鍋にして味噌のコクと牡蠣の旨みを、この酒の旨みと酸で受け止めると、互いに引き立つ。塩焼き鳥や刺身の盛り合わせ、豚汁といった、出汁や塩味の効いた料理とも幅広く合う。脂と旨みのある料理を、辛口のキレで流してくれる相性の良さがある。
派手な香りはないが、飲み進めるほどに旨みが沁みる、典型的な「燗上がりする食中酒」。地元の鍋料理を囲む冬の晩酌に、ぜひ燗をつけて合わせたい一本だ。