

天山酒造の「七田(しちだ) 純米吟醸」は、山田錦を全量使い、精米歩合50%まで磨いた純米吟醸だ。低精米の七割五分磨きで世に知られた蔵だが、このSKUでは逆に磨きをしっかり利かせ、山田錦のきれいな旨みを純米吟醸の枠で引き出している。七田というブランドの「磨かない酒」と「磨く酒」、その両方を持っているのが天山酒造の懐の深さである。
山田錦は雑味が少なく、整ったふくらみと上品な甘みを生む米だ。50%精米によって雄味の角が取れ、香りはメロンやリンゴを思わせるやわらかな吟醸香に仕上がる。含むと膨らみのある米の旨みが広がり、酸度1.4の程よい酸と日本酒度+1前後の締まりが、甘みを後口できれいに収める。雄町版が「ふくよかな厚み」なら、こちらは「端正なまとまり」で、同じ50%精米でも米の個性差が表情を分ける。
飲み頃は10〜13℃の冷酒。冷やすと吟醸香と酸が締まり、料理を選ばないバランスの良さが際立つ。温度が上がると山田錦の甘みがゆるやかに開く。派手すぎず地味すぎず、食中酒として長く付き合える安定感がこの一本の持ち味だ。
ペアリングは和食の定番が広く合う。刺身、天ぷら、出汁巻き卵、蒸し鶏。山田錦由来のクリアな旨みが素材を邪魔せず、程よい酸が後味を軽く整えるため、繊細な料理から少しコクのある料理まで橋渡しできる。
四合瓶で2,000〜2,600円前後。雄町50と並べれば米の違いが、七割五分磨きと並べれば精米歩合の違いが、それぞれくっきり見える。七田の「軸」を味で確かめるのに最適な純米吟醸だ。