

飛騨高山の古い町並みに蔵を構える原田酒造場の「山車(さんしゃ)」は、創業二百余年の老舗。花酵母仕込みの華やかな商品で知られる蔵だが、この「手造り純米」は対照的に、北アルプスの伏流水と地元ひだほまれで真っ向から造った、飾らない食中酒という顔をしている。
グラスに注ぐと、香りは穏やかで、米の甘い香りがほのかに立つ程度。冷やしすぎると硬く感じるので、10〜15℃くらいから飲み始めるのがいい。一口目から飛騨らしいふくらみのある旨みが舌に乗ってきて、しっかりと飲みごたえがある。
数値は精米歩合60%、日本酒度+3、酸度1.4。アルコール17度とやや高めで、味の輪郭がはっきりしている。前半は米の旨みでふくらみ、後半は酸が支えてすっと切れていく。常温から、ぬる燗にすると旨みがいっそう前に出て、冬の高山で飲むイメージそのものの味わいになる。
合わせるなら飛騨牛の朴葉味噌焼きのような濃い味付けが鉄板で、酒の旨みと味噌のコクが互いに引き立つ。天ぷらや焼き魚、豚の角煮といった、油や醤油のしっかりした料理にも負けない。淡白な料理よりは、味の強い皿と組ませたい一本だ。
観光地の土産酒という枠を越えて、家でしっかり飲める実力を持っている。飛騨の酒を一本選ぶなら、華やかな花酵母系とこの手造り純米を飲み比べてみると、同じ蔵の振れ幅が見えて面白い。