

相模灘を醸す久保田酒造は1844年(弘化元年)創業、神奈川県相模原市の津久井で丹沢山系の湧水を仕込み水にしている蔵元。今回の純米吟醸は兵庫産山田錦を100%使い、精米歩合50%まで磨いた一本。流行を追わず9号酵母でオーソドックスに仕上げているのが、まず数値から伝わってくる。
香りは穏やかで上品。9号酵母らしく派手な果実香を主張せず、控えめな吟醸香の奥に山田錦の落ち着いた米の香りが感じられる。最近のジューシー系に慣れた舌には地味に映るかもしれないが、これは食中酒として完成させた香りの抑え方だ。
一口含むと、山田錦らしい豊潤な旨みがまず広がり、そこに吟醸造りの透明感が重なる。日本酒度+2・酸度1.6という数値どおり、味わいは中口からやや辛口。甘みは控えめで、旨みが乗ったあとに酸とともにすっとキレる。後味に雑味がなく、盃が進む端正な造り。
温度は冷酒(10〜13℃)で透明感が際立ち、常温に戻すと山田錦の旨みがふくらむ。どちらの温度でもバランスが崩れない安定感があり、ぬる燗にしても破綻しない懐の深さを持つ。料理を選ばない食中酒として、まさに王道の振る舞いをする。
ペアリングは刺身、焼き魚、天ぷら、湯豆腐といった和食全般。淡い味付けの料理に寄り添い、主張しすぎずに食を引き立てる。四合瓶1,700〜2,000円という価格は山田錦50%磨きとしては破格で、神奈川の食中酒を一本選ぶなら真っ先に挙げたい定番。