

沼田市白沢町、尾瀬のふもとで明治35年(1902年)に創業した大利根酒造の代表銘柄「左大臣」。その中でも「米(こめ)」は、群馬県産の飯米「あさひの夢」を精米歩合88%という低精米で仕込んだ純米酒だ。心白を多く残せる扁平精米法を取り入れ、磨きを抑えながらも雑味を抑える工夫がされている。酵母はぐんまKAZE酵母2号を使う、まさに「群馬づくし」の一本。
香りは穏やかで、炊いた米や栗を思わせる落ち着いたトーン。吟醸香を求める酒ではない。口に含むと、低精米らしいふくよかな旨みと、日本酒度-3が示すやや甘めの味わいが舌に乗る。アルコール14%とやや低めの設計も手伝って、口当たりは柔らかく、最初の一杯から肩の力が抜ける。キレで切るのではなく、旨みでまとめるタイプだ。
この酒は燗で化ける。冷やでも飲めるが、ぬる燗から熱燗にかけて旨みがふくらみ、甘みと酸のバランスが整う。低精米の純米酒にありがちな重さが温度によってほぐれ、するすると飲める一体感が生まれる。寒い時期の晩酌に、徳利でじっくり付き合いたい酒。
ペアリングは、出汁や醤油を効かせた煮物・鍋ものが鉄板。おでん、肉じゃが、厚揚げの煮物、寄せ鍋などと合わせると、酒の旨みと料理の出汁が同じ方向で重なり合う。繊細な刺身よりも、味のしっかりした家庭料理と並べたほうがこの酒は生きる。
四合瓶で1,500円前後という価格は、日常の燗酒として気兼ねなく開けられる水準。華やかさを競う酒ではないが、群馬の飯米と県産酵母で造った素朴な旨口は、毎晩の食卓にそっと寄り添う。尾瀬の麓の老舗が守る、土地の味がする一本。