

館林市で文政8年(1825年)創業という長い歴史を持つ分福酒造。銘柄名は地元に伝わる昔話「分福茶釜」と、「福を分ける」という縁起の良さに由来する。この純米吟醸が使う「舞風(まいかぜ)」は、群馬県が酒造好適米として開発した県産米で、地元の米にこだわる蔵の姿勢がそのまま一本に表れている。
舞風を55%まで磨いて仕込んだ酒は、香りがやや控えめで、白い花や穀物を思わせる素直な立ち香を持つ。口に含むと最初に軽い甘みが感じられ、続いて日本酒度+7らしいドライなキレが追いかけてくる。酸度1.4が骨格を支え、甘さに流されず最後はきりっと締まる。「やや辛口の食中酒」という表現がしっくりくる味わいだ。
舞風由来かどうかは断定できないが、県産米らしい素朴な旨みがあり、洗練一辺倒ではない手造りの温かみが残る。米洗いから手作業にこだわる蔵の造りが、味の輪郭にわずかな素朴さとして滲んでいる印象を受けた。冷酒で軽快さを楽しめるほか、常温でも旨みのふくらみを損なわず、温度の幅が広いのも食中酒として扱いやすい。
合わせるなら、焼き魚や天ぷら、豚しゃぶといった日常の食卓に並ぶ料理が良い。とくに塩味や醤油味のシンプルな和食と相性が良く、辛口寄りのキレが脂や油をすっと流してくれる。濃厚なソース系の洋食よりは、和の献立に寄せたほうがこの酒の良さが出る。
四合瓶で2,000円前後という価格は、地元産米を使った手造りの純米吟醸としては妥当な水準。全国区の知名度こそ高くないが、群馬の食と県産米を結びつける一本として記憶に残る。地酒らしい素朴さと食中酒としての実力を兼ね備えた、館林の老舗が放つ堅実な純米吟醸。