
群馬・高崎の牧野酒造が醸す「大盃」の純米酒を、編集部で改めて開けてみた。山田錦を使った「マッチョ」シリーズで力強い味わいの蔵として知られるが、この定番の純米酒は、その骨格を残しつつ普段使いの晩酌酒に寄せた一本だ。グラスに注ぐとわずかに黄味を帯びた淡い色合いで、派手さはないものの、米の旨みを期待させる落ち着いた佇まいがある。
香りは控えめで、純米酒らしい穏やかさが前に出る。華やかな吟醸香はほとんど立たず、炊いた米や穀物を思わせる素朴な含み香が中心だ。山田錦を70%まで磨いた構成で、磨きを抑えたぶん米の素の旨みを残す方向に振っており、香りで主張するより味で語るタイプだと分かる。アルコール度数14度というやや軽めの設計も、香りの穏やかさと素直につながっている。
一口含むと、軽やかな口当たりから米の旨みがしっかりと広がり、そこへ落ち着いた酸が通って後味をまとめる。蔵元公表で酸度1.4、日本酒度はおおむね+1前後とされ、飲んだ印象も「甘辛の中庸でやや旨み寄り」。重さで押すのではなく、米の旨みと酸のバランスで飲ませる構成だ。冷やでも飲みやすいが、この酒は燗で本領を発揮するタイプで、ぬる燗〜熱燗に寄せると旨みがふくらんで丸くなり、キレも増す。70%精米の純米らしく、温めることで真価が出る。
ペアリングは、焼き魚や根菜の煮物、豚の生姜焼き、おでんといった、味付けのある日常の総菜と幅広くなじむ。旨みのある純米なので、淡白な肴を主役にするより、しっかりした味付けの一皿に寄り添わせるほうが合う。燗にすると煮物や鍋ものとの相性がいっそう増し、冬場の食卓で重宝する。
価格は四合瓶でおおむね1,300〜1,600円台、銘酒店では720mlで1,430円前後と、純米酒として手に取りやすい実勢に収まる。なお原料米は蔵の定番として山田錦使用とされる一方、ロットにより国産米表記となる場合もあり、ここでは山田錦と整理した。突出した華やかさで驚かせる酒ではないが、米の旨みを芯に置き、冷やから燗まで付き合える懐の広さがある。群馬の地酒を肩肘張らず楽しみたい人に勧めやすい、晩酌の常備酒だ。