

二世古酒造は、羊蹄山の麓・倶知安町で大正5年(1916年)から続く老舗の蔵。ニセコエリアの雪解け水を源とする羊蹄山の伏流水を仕込み水に使い、近年は「吟風」「彗星」「きたしずく」といった北海道産の酒造好適米にこだわった酒造りで知られる。この「純米」は、そんな蔵の地酒らしさを気負わず楽しめる定番の一本で、グラスに注ぐと澄んだ淡い色合いに、地酒らしい実直な佇まいが見て取れる。
香りは穏やかで土地に根ざしたタイプ。果実香で華やかに押すというより、米由来の柔らかな香りに、わずかな乳酸系のニュアンスが重なる落ち着いた立ち上がりだ。寒冷地で低温発酵されたであろう清涼感が背後にあり、雪国の蔵らしい引き締まった印象を受ける。
口に含むと、北海道産米のふくらみのある旨みが舌の中央に乗り、二世古らしい爽やかな酸がそれを下支えする。日本酒度・酸度は今回入手したロットでは明示がなく編集部の推定値だが、体感ではやや辛口寄り。中盤の旨みからきれいに切れていく後口で、淡麗一辺倒にならず米の厚みを残しているのが好印象だった。温度帯は冷酒(8〜12℃)で酸とフレッシュさが際立ち、常温に近づけると旨みがふくらむ。燗にしても崩れにくく、ぬる燗で旨みの輪郭がはっきりする使い勝手の良さがある。
ペアリングは食中酒として幅広い。白身魚の刺身やほっけの開きといった北の魚介はもちろん、おでんや鶏の塩焼きのように出汁と塩気で食べる料理ともよく合う。香りが穏やかなぶん料理を引き立てる側に回り、雪国の食卓に並ぶ家庭料理に自然になじむ性格だ。
価格は四合瓶で実勢1,300〜1,600円前後。羊蹄山の伏流水と道産米にこだわった地酒でありながら、日常使いに手が届く帯にとどまっているのが嬉しい。観光地ニセコの名を冠した銘柄として土産物的な側面もあるが、中身はあくまで実直な食中の純米酒。北海道産米の旨みと羊蹄山の水の清らかさを、気取らず味わえる一本として勧められる。