

加茂市のマスカガミは「アルファベットライン」というユニークな商品設計で知られる蔵で、Jは純米、55は精米歩合を表す。萬寿鏡 J55のこの一本は1801酵母を使った速醸仕込みで、現代主流の造りをそのまま名前にした潔さがある。グラスからはバナナやメロンを思わせる華やかな吟醸香が立ち、若い飲み手にも届きやすい香り設計だと感じた。
口当たりは速醸仕込みらしくすっきりと爽やか。日本酒度+2のやや辛口だが、香りが甘い印象を与えるので、飲み口は中庸に着地する。アルコール16度のわりに重さはなく、純米吟醸としての旨みは中盤に控えめに乗る程度。香りで引っ張って、味でさっと締めるバランスのとれた構成になっている。
冷酒(10℃前後)が最も得意な温度帯で、この温度では1801酵母の華やかさが素直に立つ。温度が上がると香りが散りやすく、ぬる燗にすると吟醸香と相性が崩れる場面があったので、冷たい状態で楽しむのが正解だと思う。香りを主役にした酒として、温度管理はやや神経を使う。
ペアリングは香りを邪魔しない淡い料理が合う。刺身の盛り合わせ、塩の焼き鳥、冷奴、野菜の天ぷらなどと合わせると吟醸香が生きる。味の濃い煮物や脂の強い料理だと香りが負けてしまうので、軽めの肴を選びたい。
四合瓶1,400円台から手に入り、華やかな香りの純米吟醸をこの価格で楽しめるのは魅力。商品名から造りが分かる透明性も好印象で、新潟酒の中では「香りで楽しませる日常酒」として位置づけられる一本だと評価する。