

岐阜県高山市の平瀬酒造店による「久寿玉(くすだま)」手造り純米。飛騨高山の古い町並みの一角に蔵を構え、400有余年の歴史を刻む老舗で、北アルプスの伏流水と飛騨の米で寒造りの酒を醸してきた。久寿玉という銘柄名は、めでたい席を彩る「薬玉(くすだま)」に通じる縁起の良い名だ。
精米歩合60%、日本酒度+4、酸度1.9という数字が示す通り、辛口で酸のしっかりした飛騨らしい食中酒。グラスに注ぐと香りは穏やかで、米の旨みを感じさせる落ち着いた含み香。華やかさより骨格で勝負するタイプだとすぐに分かる。
一口含むと、米の旨みが厚く広がり、酸度1.9のしっかりした酸が全体を引き締める。日本酒度+4の辛口らしく後味はキレ良く引き、飲みごたえがありながら重さは残らない。飛騨の寒い冬に鍋を囲みながら飲むことを想定したような、実用本位の純米酒だ。
この酒の本領はやはり燗にある。冷酒(10〜13℃)でも旨みと酸のバランスは良いが、ぬる燗から熱燗(40〜55℃)に振ると米の旨みがぐっと膨らみ、酸がまろやかに溶けて骨格が立つ。燗冷ましでも崩れない温度耐性の高さは、飛騨の食文化が育てた設計といえる。
ペアリングは、焼き魚やもつ煮、ぶり大根、そして鍋料理。飛騨の郷土料理である朴葉味噌や漬物ともよく合う。四合瓶で1,400〜1,700円。高山の地酒店や蔵元周辺で出会える、飛騨の燗酒を知るための一本。