

久保田シリーズで唯一の生酒、そして唯一の季節限定品が翠寿。4月から9月までの初夏向けに登場する大吟醸生酒で、精米歩合50%は碧寿と同じだが、火入れをしない生のままで瓶詰めされる点がこの酒を完全に別物にしている。アルコール度数14%とシリーズ中いちばん低いのも、軽やかさを狙った設計だ。
香りは生酒らしくフレッシュ。グラスを揺らすと若い吟醸香と青みのあるニュアンスが立ち、火入れの萬寿や碧寿にはない瑞々しさがある。口に含むと酸度0.9と低めの分だけ口当たりがなめらかで、日本酒度+4の辛口がきりっと後を引き締める。冷蔵庫でよく冷やして飲むと、その爽やかさが最大限に出る。
精米歩合50%という磨きは碧寿の山廃純米大吟醸と同格だが、翠寿は大吟醸(醸造アルコール添加)の生酒。碧寿が燗で旨みを開く重心の低い酒だとすれば、翠寿は冷やで若々しさを楽しむ重心の高い酒で、同じ50%でも目指す世界がまるで違う。萬寿の繊細さとも、千寿の食中酒らしさとも一線を画す。
合わせるなら白身の刺身、酢の物、冷製前菜、枝豆。冷たい前菜や夏の軽い肴と相性がよく、暑い季節の食卓を涼やかにする。生酒ゆえ要冷蔵で、開栓後は早めに飲み切りたい。火入れ酒のように常温で寝かせる楽しみ方はできないが、そのぶん旬の鮮度がごちそうになる。
四合瓶で1,800〜2,200円前後。限定品ゆえ流通期間が短く、店頭で見かけたら旬と割り切って手に取りたい一本。久保田の磨きを生酒の鮮度で味わえる、季節を区切る楽しみのある酒。