

加茂市の雪椿酒造は2011年に純米蔵へ舵を切った蔵で、この純米吟醸はその路線を素直に味わえる一本。グラスに注ぐと、控えめながら芯のある吟醸香が立ち、新潟酒らしい清潔感が先に来る。県の木「雪椿」を冠した銘柄だけあって、派手さよりも端正さで勝負してくる印象を持った。
最初の一口は、五百万石らしいすっきりした口当たり。日本酒度+3のわずかな辛口設計だが、純米由来の旨みが中盤で乗ってくるので、数字ほどシャープには感じない。酸度1.5が全体を引き締めていて、甘・旨・酸のバランスがちょうど真ん中に収まる。良くも悪くもクセがなく、毎日の食卓に置きやすいタイプ。
温度を上げると表情が変わる銘柄で、冷酒(10℃前後)では香りと輪郭がきれいに立つが、人肌燗(40℃前後)に振ると米の旨みがふくらんで甘みも前に出てくる。編集部としては、この酒は燗で開くタイプだと感じた。冷やで澄ませて飲むより、少し温めて旨みを引き出すほうが蔵の意図に合っている気がする。
ペアリングは食中酒の王道で対応できる。塩焼きの魚、筑前煮や肉じゃがといった煮物、鶏の唐揚げあたりまで幅広い。酸がしっかりしているので、油のある料理を流す力もある。逆に繊細すぎる先付けと合わせると、酒の旨みが少し勝ってしまう場面があった。
四合瓶で1,500〜1,900円前後と、純米吟醸としては手の届きやすい価格帯。突出した個性で記憶に残るタイプではないが、新潟の純米蔵が作る「外さない食中酒」として、常備しておくと重宝する一本だと評価する。