

日本最東端の蔵元、根室の碓氷勝三郎商店が醸す「北の勝」。明治20年(1887年)創業の歴史を持ち、流通量が限られることから「根室の幻の酒」とも呼ばれる。多くが地元で消費され、道外ではなかなか出会えない一本だ。今回の純米酒は、北海道産の酒造好適米「吟風」を精米歩合60%で仕込んでいる。
香りは抑えめで、磯の食文化を支える酒らしく自己主張は控える。グラスからは穏やかな米の香りが立つ程度で、料理の香りを邪魔しない。北の海の幸に寄り添うことを前提に造られた酒、という印象を最初の一杯から受ける。
味わいは、純米らしい旨みが軽く乗ったあと、日本酒度+3.5・酸度1.3のキレがシャープに効いてくる。後味の引きが速く、口の中がすっとリセットされる感覚が心地よい。甘さに頼らない端正な辛口で、冷やでもぬる燗でもバランスが崩れない懐の深さがある。冷酒では切れ味が際立ち、燗にすると旨みがふくらむ。
ペアリングは、地元根室の名産・花咲ガニとの相性が抜群。蟹の甘みをこのキレが引き立て、後味を軽くしてくれる。刺身、焼き魚、鍋物といった魚介中心の食卓全般によく合う。
四合瓶で1,300〜1,800円程度だが、流通量が少ないため店頭で見かけたら確保しておきたい。派手な香りで魅せる酒ではないが、海の幸と合わせたときの一体感は格別。北の食文化を体現した、出会えたら幸運な辛口純米だ。