

龍の落とし子は、高木酒造が18年もの歳月をかけて独自に育種した酒米だ。美山錦を母体に交配を重ねて生まれた品種で、まさにこの蔵だけが持つ「自前の武器」と言える。山田錦や愛山を使う他のラインが「名米を最高の状態で仕上げる」志向だとすれば、この一本は「自分たちの米で十四代の世界をどこまで描けるか」という挑戦の答えになっている。
50%まで磨いた純米吟醸は、含み香こそ華やかだが、味わいはむしろシャープだ。中取り純米吟醸のとろりとした甘みとは方向性が異なり、こちらは爽やかな酸が前に出て、ややドライな後味へとまとまっていく。十四代の代名詞である「甘旨」とは少し違う、引き締まった切れ味がこの酒の個性だ。
口当たりは滑らかで、フレッシュな酸味がアクセントを添える。温度が低いうちは香りと酸のキレを楽しみ、少し上がると米のうまみがふくらんでくる二段構えの表情を見せる。同じ蔵の別撰諸白が「上品な香りの極み」だとすれば、龍の落とし子は「キレと骨格の十四代」という棲み分けになる。
ペアリングは鯵のたたきや焼き魚、冷奴、天ぷらなど。酸がしっかりしているぶん、脂のある青魚や揚げ物にも負けず、口の中をすっきり洗い流してくれる。淡麗な和食よりも、ややうまみの強い料理と合わせたときに本領を発揮する。
定価は四合瓶で3,000円前後だが、自社開発米というストーリー性も手伝って市場では数倍の値がつく。十四代の中でも「蔵の哲学が最も色濃く出た一本」を探すなら、まずこの龍の落とし子に触れてほしい。