

別撰諸白は、兵庫県特A地区の播州山田錦を45%まで磨いた純米大吟醸で、主に山形県内を中心に流通する限定色の強い一本だ。「諸白」とは麹米も掛米も精白米を使う伝統的な高級酒の呼び名で、その名を冠する時点で蔵の自負がうかがえる。手頃な本丸が日常の顔なら、こちらは十四代の格式を示す上位ラインという立ち位置になる。
注ぐと、ラ・フランスを思わせる上品な果実香に、花のような甘く爽やかな香りが重なる。中取り純米吟醸の華やかさをさらに磨き込んだような香りで、純米大吟醸ならではの密度の高い含み香だ。口に含むと、山田錦由来のきれいな甘みと旨みが層になって広がり、余韻は長く、静かに引いていく。
味わいの方向性は、龍の落とし子のシャープさや吟撰の軽快さとは対照的で、こちらは「ふくよかさと余韻の深さ」で勝負している。日本酒度は+2と数字上は中庸だが、酸とのバランスがよく、甘さと旨みが前に出る飲み口に仕上がっている。要冷蔵で管理される繊細な酒質も、上位ラインらしいこだわりだ。
ペアリングは白身魚の刺身や鮨、蟹といった繊細な魚介が王道。香りを生かすなら、塩や酢で軽く締めた一皿が合う。デザートにラ・フランスを添えれば、酒の香りと果実が呼応して、食後酒のような楽しみ方もできる。
定価は四合瓶で3,800円前後だが、山形県内限定という希少性も相まって、県外の市場では数倍のプレミアム価格になることが多い。十四代の「香りと余韻の到達点」を体感したい人にとって、追いかける価値のある一本だ。