

中野市の丸世酒造店は、創業1870年、「世の中が丸くなるように」との願いを蔵名に込めた五代続く小さな蔵。この純米吟醸は信濃町産ひとごこちを主体に、もち米を加える四段仕込みを取り入れ、長野D酵母で醸している。栓を抜くと、メロンやバナナを思わせる華やかでふくよかな香りが広がり、甘口寄りの優しい酒だと一目でわかる。
口に含むと、日本酒度-6らしい柔らかな甘みがまろやかに舌を包む。もち米四段由来とみられる、とろりとした厚みのある旨みが特徴的で、飲み口はあくまで穏やか。酸度1.3が後半でほどよく締めるため、甘ったるさは残らず、余韻の最後はすっと収まる。華やかさと優しさを併せ持つ、人を選ばない一杯だ。
温度は低めが基本。8〜12℃でよく冷やすと香りと甘みのバランスが整い、上品にまとまる。常温に近づけると旨みのボリュームが増し、デザート的なふくよかさが顔を出す。甘口が好みなら少し温度を上げて、酒そのものを楽しむ飲み方も悪くない。冷やしすぎると香りが閉じてしまうので注意したい。
ペアリングは、甘みと旨みが対話する組み合わせがいい。ぶり大根や栗の甘露煮といった甘辛い料理に寄り添い、豚しゃぶのポン酢の酸とも好相性。意外な発見はクリームチーズで、酒の甘みと乳の塩気・コクが溶け合い、ちょっとした食後の一杯として完成度が高かった。
四合瓶で千円台後半からと、純米吟醸として手頃な価格も魅力。華やかな香りと優しい甘み、もち米四段の厚みという分かりやすい個性があり、日本酒を飲み始めた人にも勧めやすい。辛口が続いた食卓に変化をつけたいときに開けたい、ほっとする甘口の良作だ。