

大野市の城下町で1748年から続く宇野酒造場の「一乃谷」。奥越の厳しい冬と豊かな伏流水が育てた、骨太な純米酒を醸す蔵だ。今回手に取ったのは山廃仕込みの特別純米。華やかな吟醸酒が増えるなか、あえて山廃の旨みで勝負する一本を編集部として味わってみた。
注いでみると、香りは穏やかで主張しすぎない。代わりに、山廃由来の乳酸を感じさせる少しふくよかな香りが奥に潜む。色合いはわずかに山吹がかり、いかにも飲みごたえのありそうな佇まいだ。
口当たりは思いのほか柔らかく、含むと五百万石の旨みと山廃らしいコクが厚みをもって広がる。日本酒度+3、酸度1.4の数値以上に味の密度を感じさせるのは、酸がしっかり輪郭を描いているからだろう。冷やでも飲めるが、この酒の本領はぬる燗から熱燗。45〜50℃まで温めると旨みが一気にほどけ、余韻が長く伸びる。
ぶり大根や厚揚げの煮物、味噌田楽といった、こっくりした和食の煮炊き物が好相性。鴨ロースのような脂と旨みのある肉料理にも負けない。淡麗な酒では物足りない、料理と真っ向から組み合いたい場面で頼れる。
四合瓶で1,500円台からと、山廃の特別純米としては手頃。燗酒の楽しさを再確認させてくれる、奥越の実直な造りが伝わる一本だ。