

奥信濃・飯山の角口酒造店が、豪雪地帯の伏流水で醸す「雪明かり」。飯山産ひとごこちを59%まで磨いた純米吟醸で、雪国の酒らしい清涼感が名前のとおり一杯に宿る。冷蔵庫から出した瓶を開けると、控えめながら凛とした吟醸香が立ち、いかにも端正な造りを予感させる。
アルコール度数14%という軽めの設計が、この酒の性格を決めている。口当たりは軽やかで水のように入ってくるが、薄いわけではない。ひとごこちの柔らかな旨みが中盤でふわりと顔を出し、日本酒度+5の辛口らしいシャープなキレで素早く引いていく。酸度1.3が全体を引き締め、後口はあくまで清潔。雪解けの清水を思わせる透明感だ。
低アルコールゆえに、冷やしすぎると味が締まりすぎる印象もある。8〜12℃あたりで香りと旨みのバランスが最もよく、常温に近づけるとひとごこちの甘みがわずかに開いて表情が和らぐ。軽快さを活かすなら、よく冷やして食前から食中へと流れる飲み方を推したい。
合わせたいのは、やはり地元の信州そば。辛口のキレがそばつゆの出汁と喧嘩せず、口の中をリセットしてくれる。白身魚の昆布締めやきのこの炊き込みご飯など、淡くも旨みのある料理に寄り添う。鴨の治部煮のような少し甘い煮物にも、酒の辛さが好対照になって楽しめた。
四合瓶で2千円台前半。低アル純米吟醸という今どきの設計を、奥信濃の蔵が雪国らしい清冽さで仕上げた好例だ。軽快で食事を選ばず、飲み疲れしない。日常の食中酒として長く付き合える、静かに良くできた一本。