

福井県美浜町、三方五湖と若狭湾に挟まれた地で1718年から酒を醸す三宅彦右衛門酒造。その看板「早瀬浦」は北陸でも指折りの硬派な辛口として知られる。今回はその純米酒、福井県産五百万石を55%まで磨いた火入れの実勢SKUを編集部で試した。
香りは抑制的で、米の含み香にほのかなミネラル感がのぞく程度。海辺の蔵らしい引き締まった印象だ。一口含むと、日本酒度+9という数字が示すとおり、甘みはほとんど感じさせずに鋭い辛さが舌の中央を走り抜ける。それでいて痩せた辛さではなく、酸度1.6が骨格を支え、米の旨みが薄い膜のように後を追う。
このキレの良さは尋常ではなく、口に含んでから飲み込むまでが速い。余韻に甘さの残像がほとんどないため、次の一口、次の肴へと自然に手が伸びる。冷や〜常温で輪郭が最もシャープに出るが、ぬる燗にすると辛さの角が取れ、旨みがわずかに膨らんで表情を変える。
ペアリングは若狭の海を思えば答えは早い。白身魚の刺身、生牡蠣、焼き魚、塩で食べる天ぷら。塩気と魚介の旨みを、この潔い辛口がすっと流し、口中をリセットしてくれる。脂の少ない淡い肴ほど相性が際立つ。
価格は四合瓶で2,000〜2,400円ほど。流通は限定的だが特約店なら定価で出会える機会がある。甘い酒が増えた今の市場で、ここまで割り切った辛口は貴重で、海の幸を肴に辛口を飲みたい人にとって基準になる純米酒。