

雪室貯蔵三年は、八海山の中でも完全に一線を画す異色の一本だ。南魚沼の雪を利用した天然の冷蔵庫「雪室」で約3℃の低温を保ちながら3年かけてゆっくり熟成させた酒で、八海山が得意とする淡麗辛口の対極にある、まろやかで奥行きのある味わいに仕上がっている。
精米歩合50%、アルコール度数17%とやや高め、日本酒度-1・酸度1.5。新酒で出荷される特別本醸造や吟醸、純米吟醸とは設計の出発点からして違う。雪室の安定した低温長期熟成によって角が取れ、若い八海山にはない蜜やナッツを思わせるふくよかな熟成香と、とろりとした口当たりが生まれている。-1という日本酒度が示すわずかな甘みが、熟成由来の旨みと溶け合って長い余韻を残す。
通常ラインの八海山が「飲み飽きしない引き算の食中酒」なら、こちらは「じっくり味わう足し算の酒」。純米吟醸(新酒・酸度1.7)のシャープさや特別本醸造のキレとは真逆の方向に振り切っていて、同じ蔵の酒とは思えないほど表情が違う。八海山の技術が辛口だけでなく熟成でも一級であることを証明する、いわば蔵の懐の深さを見せる一本だ。
冷やしすぎず12〜15℃前後で、香りと甘みを開かせて飲むのがいい。合わせる料理も淡白な和食より、熟成チーズや鴨ロース、うなぎの蒲焼き、味噌田楽といったコクのあるもののほうが映える。食前・食後にゆっくり傾けるのにも向く。
四合瓶で4,500〜5,500円前後と価格は張るが、八海山の入門編からひと巡りした人が「次の八海山」として開けるのにふさわしい。同じ蔵でここまで違う酒が造れるのかと、素直に感心させられる熟成酒だ。