

山形県鶴岡市、創業300年を超える老舗・渡會本店の代表銘柄「出羽ノ雪」純米。庄内の地で生酛(きもと)造りを軸に据え、伝統的な酒母づくりにこだわる蔵として知られる。今回は生酛仕込みの純米を四合瓶で向き合った。
香りは穏やかで、米と乳酸由来のふくよかな含み香が中心。生酛らしい奥行きのある香りで、派手さはないが鼻に近づけると複雑な発酵のニュアンスが感じられる。冷やして含むと、まず米の旨みと丸みのある甘みが広がり、日本酒度+1前後の穏やかな辛さがそれを支える。酸度1.6が骨格を作り、生酛特有のコクと余韻の長さが印象に残る。
このタイプは燗で本領を発揮する。ぬる燗(40〜45℃)に振ると、米の甘みと旨みが一段とふくらみ、生酛の酸が後口を引き締めて飲み飽きしない。冷やでは輪郭が締まって端正だが、温めると味の層が立体的に開く。庄内の冬の食卓に寄り添ってきた酒らしい温度適性の広さがある。
ペアリングは、旨みのある温かい料理。焼き魚、根菜の煮物、おでん、きのこ料理といった出汁の効いた和食と好相性。生酛のコクが料理の旨みと響き合い、燗で合わせると一層まとまりが良くなる。
四合瓶で1,300〜1,800円ほど。手頃な価格ながら生酛造りの厚みをしっかり味わえる一本。冷やでも燗でも楽しめる懐の広さがあり、家庭の晩酌に常備して季節や料理で温度を変えたくなる、庄内の伝統が息づく純米。