

岐阜市の白木恒助商店は、戦後早くから熟成古酒に取り組んできた蔵で、「達磨正宗」は古酒という言葉が一般化する前から琥珀色の日本酒を世に出してきた老舗ブランド。今回は入り口として手に取りやすい純米の三年熟成タイプを開けてみた。グラスに注ぐと、まず色の濃さに驚く。淡い紅茶を思わせる琥珀色で、一般的な日本酒の透明感とはまったく別物の表情だ。
立ち上がる香りは、ナッツ、カラメル、干し柿、わずかに紹興酒を連想させる複雑なニュアンス。新酒のフレッシュな吟醸香とは対極にある、時間をかけて生まれた熟れた香りだ。一口含むと、日本酒度マイナス6の数字どおり、とろりとした甘みが舌に乗る。だが単調な甘さではなく、酸度1.5の輪郭と熟成由来のほろ苦さが甘みを引き締めていて、最後まで重たくなりすぎない。
キレという観点では、すっと消えるタイプではない。余韻が長く、飲み込んだあともカラメルと木の実の香りが鼻に抜け続ける。この「消えなさ」こそ熟成古酒の個性で、レーダーでキレを低めに、余韻と個性を最大に振ったのはそのため。良し悪しではなく、楽しむ軸が普通の日本酒と違う一本だと考えてほしい。
温度帯で表情が大きく動くのも面白い。冷やしすぎると香りが閉じてしまうので、常温から少し冷えたあたり(15〜18℃)が編集部の好み。ぬる燗にすると甘みと香りがふわっと膨らみ、食後のデザート酒のような佇まいになる。ロックで少しずつ薄めながら飲むのも、この濃さなら十分成立する。
ペアリングは淡白な和食よりも、味の濃い料理。鴨ロース、うなぎの蒲焼、酢豚のような甘酸っぱい中華と合わせると、酒の甘みと料理のタレが響き合う。チーズやドライフルーツと合わせて食後にゆっくり傾けるのもいい。四合瓶で2,000円前後と古酒としては手頃なので、熟成酒の世界への最初の一本として勧めやすい。