

きりたんぽ発祥の地として知られる鹿角市花輪で、明治五年から続く千歳盛酒造。北国秋田の中でも特に寒冷なこの土地で、奥羽山脈の伏流水を使い、時間をかけた長期低温発酵で酒を醸す蔵だ。今回は地元にゆかりのある名を冠した特別純米「左多六」を開けてみた。
香りは穏やかで、米のふくよかな含み香が中心。派手な吟醸香を求める酒ではなく、地酒らしい落ち着いた立ち上がりだ。一口含むと、日本酒度+4の辛口らしいキレと、キヨニシキ由来のしっかりした旨みが両立している。酸度1.3とアミノ酸のバランスが穏やかで、辛口ながら旨みが乗った、骨太で飲み飽きしない味わいに仕上がっている。
温度帯の振り幅が広いのがこの酒の良さで、冷やせばキレが立ち、燗をつければ旨みがふくらむ。個人的には人肌〜ぬる燗(40〜45℃)が最もまとまりがよく、米の旨みと辛口のキレが手を取り合うように調和した。寒冷地の蔵らしく、燗で映える性格をしっかり備えている。
ペアリングは、地元名物のきりたんぽ鍋を筆頭に、山菜の天ぷらや塩の焼き鳥、煮魚といった和の肴と幅広く合う。出汁や塩を生かした料理の旨みを邪魔せず、辛口のキレで後味を整えてくれる。鍋を囲む冬の食卓に向く一本だ。
四合瓶で1,300〜1,600円ほどと、特別純米としては手の届きやすい価格帯。鹿角の郷土料理と合わせて燗で楽しむ、土地の文脈ごと味わいたいタイプの地酒である。