

安芸市の有光酒造場が手がける「安芸虎」は、辛口の土佐酒のなかでもとりわけ硬派な蔵として知られる。この山田錦80%精米の純米酒は、あえて磨きを80%に抑え、米の旨みを残したまま日本酒度+10まで振り切った超辛口で、編集部としては「高精米=高級」という思い込みに揺さぶりをかけてくる一本として面白く向き合った。
香りはおとなしく、米そのものの穀物香がうっすら立つ程度。華やかさを期待すると肩透かしを食らうが、これは食事に寄り添う設計の現れだ。口に含むと、80%精米由来のふくよかな米の旨みが先に広がり、続いて酸度1.8の力強い酸と+10の鋭いキレが、その旨みを一気に断ち切っていく。骨太でありながら後口は驚くほど軽い。
この振れ幅の大きさが安芸虎の真骨頂だ。冷やすと酸の輪郭がくっきり立ち、カツオの塩たたきのような薬味と脂のある料理を受け止める。一方で40〜45℃ほどの燗につけると、米の旨みがふわりとほどけて甘く感じられ、根菜の煮物や角煮といった濃い味付けと驚くほど噛み合う。一本で二度おいしい温度設計だ。
低精米ゆえに雑味が出やすい設計を、酸とキレでまとめ上げているのが醸造技術の見どころ。淡麗できれいな酒に慣れた舌には最初こそ武骨に映るが、飲み進めるほど料理が進む「実用の酒」だと分かってくる。
四合瓶で1,500〜1,900円という価格は、毎晩のローテーションに無理がない。香りで魅せる酒に疲れたとき、米の旨みと辛口のキレで黙々と食事を進めたい人にこそ手に取ってほしい。