

同じ純米吟醸でも、恵乃智(めぐみのとも)が華やかさで攻めるなら、「奏乃智(かなでのとも)」は透明感とキレで魅せる。清水清三郎商店「作(ざく)」のなかで、研ぎ澄まされた線の細さを身上とする一本だ。精米歩合を50%まで磨き、協会14号(金沢酵母)を用いて、雑味を削ぎ落とした設計になっている。
香りは控えめながら柑橘やミネラルを思わせる清涼感。口に含むとガラス細工のような透明感のある味わいが広がり、控えめな旨みとほのかな果実の甘みを残しつつ、後口はシャープに切れていく。恵乃智の「ふくらみ」に対し、奏乃智は「すっきりした立ち姿」。同じシリーズの純米吟醸で、ここまで方向性を変えられるのかと感心する。
精米歩合60%の恵乃智に対し、奏乃智は50%。この10%の磨きの差と酵母の違いが、口当たりの繊細さに直結している。インターナショナル・ワイン・チャレンジ2023など海外品評会での金賞受賞も、この透明感が国際的な評価軸に乗ることを示している。
冷酒でこそ真価が出る。白身魚の刺身、貝類、塩で食べる天ぷら、柑橘を効かせたサラダなど、素材の繊細さを生かす皿と合わせたい。味の濃い料理よりも、引き算の効いた一皿が似合う。
四合瓶で2,300〜2,800円前後。恵乃智と奏乃智を並べて飲めば、「華やかさ」と「キレ」という蔵の二つの個性が同時に見えてくる。純米吟醸の中でも、明確に選ぶ理由のある一本だ。