

三重県伊賀市上野の中井酒造場は明治30年(1897年)創業、忍者の里・伊賀に蔵を構える小さな造り手。年間生産量はおよそ60石(一升瓶換算で約6,000本)という限定醸造で、少量を丁寧に仕込む姿勢が地元の根強いファンに支持されている。「三重錦(みえにしき)」はその看板銘柄だ。
この「純米 超辛口」は、日本酒度+13という数字が示すとおり、徹底して辛口に振った設計。とはいえ、ただ水のように軽いわけではない。八反錦由来の旨みと、酸度2.1のしっかりした酸が芯にあり、辛さの奥に米の味わいがきちんと残る。一口含むと、まず旨みがふっと立ち、追いかけるように鋭いキレが口中を洗い流していく。後口はすっと乾き、すぐ次の一杯に手が伸びる。
冷酒(10〜13℃)でキレの鋭さが際立つが、ぬる燗(40〜50℃)に振ると旨みがふくらみ、辛さがまろやかに溶けて別の表情を見せる。温度で印象が大きく変わる、遊びがいのある一本。
ペアリングは、味のはっきりした料理。焼き魚、塩で食べる天ぷら、鶏の塩焼き、もつ煮など、脂や塩気を辛口のキレで断ち切る組み合わせが楽しい。
四合瓶でおおむね1,300〜1,700円。生産量が少なく流通は限定的だが、伊賀の地酒専門店なら出会える機会がある。「超辛口」をうたう銘柄のなかでも、旨みと辛さの均衡が取れた完成度の高い一本だ。本記事のスペックは火入れの超辛口純米のものを記載しており、生酒やにごりなど別仕様では数値が異なる。