

「碧山(へきざん)」は、最高級の純米大吟醸「環山」と対をなすように設けられた純米吟醸グレードだ。山田錦を100%使い精米歩合50%で仕込む点は同蔵の定番純米吟醸と同じだが、碧山は日本酒度+2.0・酸度1.7と酸をやや高めに設計し、「黒牛らしいしっかりとした旨味」と「すっきりとしたキレ」を両立させているのが個性になっている。環山が香りと透明感の頂点なら、碧山は食中での旨みとキレを突き詰めた一本で、編集長としては晩酌の主役を張れる実戦派と評価した。
香りは、上品な吟醸香が穏やかに立ちつつも、定番の純米吟醸より控えめで落ち着いている。香りで主張するより、口に含んでからの旨みとキレで勝負する設計が読み取れる立ち香だ。
味わいは、含むと山田錦由来のしっかりした旨味が舌に広がり、そこに酸度1.7の高めの酸が骨格を入れて、後半をすっきりと引き締める。同じ50%精米でも、酸を立てたぶん定番の純米吟醸よりキレ味が鋭く、料理と合わせたときに口の中をリセットする力が強い。能登杜氏・岡井勝彦氏が協会901号酵母で丁寧に仕込んだ、質の高さが実感できる仕上がりだ。
ペアリングは、旨みと酸を生かして味のある料理に合わせたい。鰹のたたきや鶏の照り焼き、焼き魚、煮浸しといった出汁や醤油の効いた一皿に対して、碧山の旨みが受け止め、酸とキレが後を流してくれる。脂や濃い味にも負けないので、食中酒としての汎用性は黒牛のラインでもトップクラスだ。
価格は四合瓶(720ml)で実勢1,700〜1,900円ほど。定番の純米吟醸とほぼ同価格帯ながら、酸を立てたキレ重視のキャラクターで明確に差別化されている。環山ほどの贅沢はいらないが、黒牛の旨みをきれいなキレで毎日楽しみたい、という人にこそ碧山を薦めたい。