

栓を開けてグラスに注ぐと、まず色合いにわずかな含みがある。透明というよりは生命感のある淡い色で、定番酒の顔をしながら一筋縄ではいかない気配が立つ。滋賀県甲賀市の笑四季酒造が手がけるセンセーション黒ラベルは、精米歩合50%という純米大吟醸並みの規格を四合瓶1,400円前後で出してくる蔵の看板。最初のひと振りから「日常で飲み込めるのに、味は遊んでいる」という蔵の姿勢が伝わってくる。
香りは派手な吟醸香ではなく、ヨーグルトやバニラを思わせる乳製品系のニュアンスに、柑橘の皮のような爽やかさが重なる。きょうか7号系由来とされるフレッシュな立ち香で、メロンや洋梨を期待すると肩透かしを食うが、その分だけ食卓に置いたときの邪魔をしない。鼻に抜ける酸の予感が、口に運ぶ前から味の方向性を教えてくれる。
口に含むと、甘旨味がふくらんだ直後に酸がくっきりと立ち上がり、最後にじわりと辛みへ展開する。この「甘→酸→辛」の三段構えがセンセーションの個性で、酸度はおおむね1.7前後、日本酒度はほぼ中庸からやや辛口に振れる印象(数値は非公開のため編集部の試飲からの推定)。10〜13℃の冷酒では酸のキレが際立ち、15℃を超えて温度が上がると米の甘旨が前に出てふくよかになる。常温まで持っていっても痩せないので、温度で表情が変わるのを試す価値がある。
ペアリングは「酸で受ける」献立が合う。白身魚のカルパッチョや酢の物のように酸を含んだ料理と並走させると気持ちよく、鶏の唐揚げやフライものの脂を酸が断ち切ってくれる。ナチュラルチーズや生ハムといった洋の前菜とも噛み合い、純米でありながらワイン的な食中酒として機能する。淡麗辛口を期待する燗向きの献立よりは、味の濃い惣菜に冷やで添えるのが本領。
四合瓶でおよそ1,375〜1,540円という価格は、精米50%の純米としては破格に近い。仙禽や而今のような現代系のジューシーさを、まず日常の価格で体験したい人にとって入口として薦めやすい一本。派手さでなく構造で記憶に残るタイプで、滋賀の現代酒を語るうえで一度は通っておきたい定番だ。